「…タッパが欲しい」 ことあるごとに、士郎はそう言う。 「欲しいから伸びるってわけでもないでしょ。 大体、衛宮くんの場合、もう保証されたようなもんなんだからいいじゃない。 そんなの、焦ってもしょうがないんだから。」 「そうは言ってもさ」 …届かないんなら、椅子持ってくればいいのに。 足りない分を背伸びで補おうと、士郎は棚の上に手を伸ばす。 「なんていうか、悔しいじゃないか」 やっぱその、負けたくないし、とぼそりとつぶやく。 「あのね、士郎」 「大丈夫だって、届くから」 ここが勝負どころといわんばかりに、すごく真剣な顔をして。 …男の子って、馬鹿だ。 なんでこう、しょうもないことに意地を張りたがるんだか。 「師匠として忠告するけど。サルじゃないんだから道具を使いなさい。 そもそも背丈なんてありゃいいってもんじゃないんだし」 「―――師匠、そうはいいますが。あるに越したことはないと思います」 もう一歩、というところで士郎の手に収まらない棚の上の缶。 かりかりと、猫がドアを引っかいてるような情けない音がする。 なんかなぁ。 男の子が、というより士郎が馬鹿なのかも。 ほんとうにわたし、あんまり背の高いのは考えものだと思ってるんだけど。 「いずれ伸びるのは仕方ないとして。 急に伸びられたって、わたしだって困るのよ」 なんでさ、と怪訝そうに振りむいた不肖の弟子にひとつ、お見舞い。 |
「―――そしたら、わたしから届かなくなっちゃうじゃないの」 |
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赤いあくまはキス魔ですから。
このあと、士郎のどたまに缶詰が降ってくる、に一票。
追加。
補完漫画