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RN/HF 9日目 レイン

「だめです、先輩―――それじゃきっと、先輩を傷つける」
イラスト 104.png
「傷つける、のに―――」


「好きな女の子を守る」という言葉に満足げに微笑むイリヤの顔と、それでも拭い去れない不吉なアーチャーの言葉とを印象深く残しつつ教会へ。
幕間から衛宮邸での凛との対峙まで。
幕間は士郎がバーサーカーに掻っ捌かれた3日目夜の間桐邸での幕間を桜視点でリプレイ。その夢から覚めた桜と言峰のやり取りから。
内容自体は3日目のものと大きく変わりませんが、桜の視点から執着に近い凛へのこだわりと恐れを再提示するシーンです。作中で初めて凛を指して「姉さん」と呼ぶシーンでもあり。

凛と桜が小さい頃に別れたきりの姉妹だと知った後、呼び方が小さい頃のまま止まってるんじゃないかと思ってたもので「姉さん」という呼び方だったことに驚いたっけなぁ。思わず口をついて出るのが「お姉ちゃん」だったらツボにクリーンヒットするところでした。
―――haで一回やってくれたけどホラーテイストだったんで凛にガクブルされてたなぁ(笑)

桜、ぶっちゃける

この日は朝から何回か空模様の描写がありますが、士郎が教会にむけて走る道すがらとうとう雨に。

幕間。3日目夜の間桐邸修練場(兼、霊廟)。桜視点。
間桐さんちは、代々の家人の遺体で蟲を養っている模様。……栄養がありそうですね(棒読み)
ここで初めて、桜が衛宮邸に通っていたのは監視のためだという話が出てきます。士郎にはマスターにふさわしいと思えるだけの技量も聖杯戦争の知識もないと判明して、士郎と戦うような事態など起こらないと安心しつつ通っていた一年間と、士郎の手に顕れた兆しを見てしまってからの動揺。慎二ではなくお前が戦えと言われて「マスターは全員殺さねばならないのか」と問いに問いで返し、「サーヴァントさえ奪ってしまえば支障ないようなマスターなら生かしておいてもかまわない」という臓硯の言葉の意外さに思わず気を緩めてしまった一瞬。それでも警戒して首を縦に振らない桜と「欲しいものがあるのなら奪えばよいではないか」とそそのかす臓硯。士郎は汚してはならない憧れであって欲しいものではないと再三戦いを拒みます。桜は3ヒロインの中で唯一士郎を見上げる形で見てきた、登場人物の中でも珍しい立ち位置のキャラですね。士郎は親しい相手からは不自然で危ういところのある人間として見られてることが多いんですが。
桜が臓硯の意に沿わないたびに自由を奪われて蟲倉に放り込まれてきた、と言う再教育の描写がまるごとカット。単に「臓硯の怒りを恐れ」という書き方に変わりました。
桜がそういうなら今回も傍観に徹しようという言葉で桜が安堵しかけた隙に「傍観するならば勝つのは遠坂の娘だろう」とすかさず楔を打ち込みます。
桜の境遇には全くかかわりなく、欲しいものを手に入れて颯爽と生きている凛を見つめ続けていた桜にはこれが大ダメージで、目眩を起こして吐くほど動揺する羽目に。

このときの夢から目を覚ます桜。毎度おなじみ言峰の私室で治療台に寝かされた状態です。PC版ではまっぱだったらしいのですが、レアルタでは「そのような姿では」という描写でぼかされててて、施術用の薄着を着てるのかなという感じになってます。まんまかもしれないけど。
「目の前には黒い―――自分と同じような」神父が立っている、という桜から見た初対面の言峰の描写は翌日の「あの人、私には勝てないもの」に掛かってくる部分かと。
桜が生き残れば士郎と凛が苦しむのでそのほうが楽しい、礼拝堂の様子は私室に筒抜けになる構造なので2人がどういう選択をするか気になるならここで待てと告げて言峰は礼拝堂へ。

視点が士郎に戻って、教会に到着したところから。凛のほうが先についていて、壁際で立ったまま結果を待っています。士郎と凛は目を合わせないまま。
やがて現れた言峰を見るなり、ぎょっとして「アンタ、魔術刻印どうしたの」という凛。凛のものとは違う、消費型のものなので全部治療に使っちゃいましたというのですが、えーと魔術刻印ていうかそれってZeroで璃正神父から引き継いだ代々の令呪ですか?Zero2巻で「消費型フィジカル・エンチャント」という書き方をされてるのですが…あー、でも令呪だとすると凛が言峰を見ただけでわかるっていうのは変な気もするしなぁ。魔術刻印は起動状態にあるものを他人が察することが可能らしいですが。言峰曰く「父から受け継いだ」「格の劣る令呪のようなもの」とのこと。ようなもの?
……うーん、やっぱり詳細不明。
ともあれ桜の手術は終わり、神経と同化していないものは取り除いたものの完全に除去するには心臓を引き抜かなければならない状態とのこと。除ききれず残った虫が起動すればあっさり暴走すると聞いて、桜を殺そうと壁際を離れた凛とそれを止めようと凛の手を掴んだ士郎とでにらみ合いに。2人の言い合いは切嗣や士郎が理想として結局理想は理想として受け入れざるを得なかった現実とのせめぎあいとも言えますね。情と効率の否定しあい。「手を放さないと根元から吹き飛ばす」と一触即発の状況になったところで礼拝堂の隣の部屋からガラスの割れる音と雨の中を走り去っていく音。
……隣?
fate13日目に言峰の私室を訪れたときの描写だと礼拝堂から言峰の私室への道のりは迷路じみているとあるのですが、その果てに行き着くところが実は隣だったということなのか、それとも背景が同じだけで別の部屋なのか。fate15日目の記述だと礼拝堂から言峰の部屋までは1回行ったことのある士郎でも案内なしではたどり着けないそうなんですけど…(建物の構造把握についてはアーチャーが得意で、間桐邸であっさり隠し部屋と通路を発見してますね)。

教会の出口は礼拝堂と裏口の2ヶ所で窓は嵌め殺しが多い、ということで「仕方なく窓ガラスを割ったのだろうが、病み上がりにしては少々乱暴だな」とにんまり言峰。「構造上の欠陥で」礼拝堂の様子は桜のいた部屋に筒抜けです、と士郎と凛にもネタ晴らしして、凛は「嘘つけこのインチキ神父」と血相変えて傘も差さずに桜を追いかけていきます。うん、どうみてもわざとですほんとうに(ry)
このときテンパった凛が漏らす「あの子ってばあんな体で何処に行こうってんだか」というセリフが好きです。なんだかんだで愛着やら情やらが駄々漏れなのが遠坂さんのいいところ。

士郎も桜を追って飛び出そうとしますが言峰がまだ話がある、とストップ。
桜の神経と同化した刻印虫は全神経の4割に及び、絶えず魔力が欠乏することから自我すら削られて、果てにはサーヴァントを維持するという機能のためだけに魔力を奪うモノになるし、それすら長く持たずに自滅すると宣告。
どうせ助からないものの為に力を尽くすのかと問われて、あんたが刻印を使い切ってまで桜を治療したのだって同じことだろうと返し、士郎も教会を出ます。

まずは新都駅前をあたりますが、空振り。桜らしい女の子を見かけたという情報も得られなかったことから、深山町を探そうと大橋を駆け戻る途中で公園に立ち尽くしている桜を発見。臨海公園に降ります。
ここのシーン専用の、雨に濡れた立ち絵の塗りがなにげに好き。
雨ざらしのままでいる桜に声を掛けると「来ないでください」と拒絶。テキストからもっと切羽詰った感じの声を想像していたんですが、だいぶ甘さを残した声ですね。白桜は全体に甘えてるような声色ですが、この局面でもその色が残ってます。張り詰めたような雰囲気にそれ以上は近づけず、離れた距離から「帰ろう」と呼びかける士郎に色々とぶっちゃける桜。間桐に入ってから何があったのかを語るくだりでは「小さい頃からよくわからないものに触られてきました」だけが残りました。原作でもいや気にするのはそこなんですかと若干目の滑った文でしたが。
耳飾の薬品についても改変。
原作ではここで「毒ではなく媚薬で、感覚を鋭敏にするためのもの」となっていましたが「毒でもなんでもない、暗示のようなもの」という変わりました。どういう暗示かは書いてないなー。分類的にはらぶいシーンに入るはずなのになぜかどろどろしているのがこのシーンの特徴でしたが、レアルタでさすがに色々軽減されました。……ぼかす形でだけど。
自分は士郎が思っているような女の子ではなくて、魔術師であることも実験体にされていることも黙って士郎をだましていて、死のうとも衛宮邸にいくのをやめようとも思ったけど何もかも怖くてできなかったとひたすら自己嫌悪と懺悔をぶっちゃける、というのは原作と同じです。

初めて見る桜の泣き顔に、今まで影で泣かせていた分これ以上泣かせることは出来ないと抱きしめて一枚絵。
白い息を吐きながら目を閉じ、「桜だけの正義の味方になる」という言葉に「それじゃきっと先輩を傷つける」と応えながらもそれ以上は振り払えなくなってしまった桜。
このシーンもこの日何度か繰り返された「この恋の終わりは報われるものではない」という不吉な確信で締められています。

一枚絵の辺りで雨がやみ始め、ずぶぬれのまま手をつないで衛宮邸に帰ってきた2人。屋敷の前までくると玄関に明かりがついています。士郎も桜も夕方に出たきり戻ってきてはいないので、藤ねえが戻ってきたのだろうかと入ってみると上がり口で待ち受けていたのは凛。
……鍵開けたのはアーチャーでしょうか?切嗣の結界はどうしちゃったんだろうと思ったけど、これってアーチャー相手だと反応してくれないかもしれないなぁ。元家主。
思わぬ訪問者に声を詰まらせる士郎と、反射的に「ね―――」と口にしかける桜。とっさに桜を後ろにかばった士郎と凛とで対峙。桜に手を上げるつもりなら先に俺を黙らせろという士郎に
「わたしは桜を殺すわ。それを邪魔するのなら、アンタも殺す」と容赦ない凛の言葉。ここはどうにかして桜をつれて逃げなきゃいけないと緊張が募る中、凛が口を開きかけた瞬間に「やめてください、姉さん―――!」と間に割ってはいる桜。公園で士郎に言葉を尽くされて、自分でもやれるだけ頑張って見たいという気になったのでしょう、まだ一人だけしか傷つけていない、傷つけられた本人が許してくれるといっているのだからまだ罰を受ける謂れはないはずだと懸命に言い募りますが凛の態度は変わらず。セイバーを失ってマスターでなくなった士郎に手を上げるなんて、本気かといってもやっぱり変わらず。
するとまっすぐに凛を見据えて、ならば自分がライダーのマスターとして凛と戦うと口にする桜。凛は一瞬驚いた顔を見せたあと、そこまで言うならマスターとして聖杯を勝ち取って呪縛を解けと告げ、士郎には桜が暴走したあかつきには相打ちになってでも桜を止めきれと言い残して去ります。
凛とは1日も経たないうちに同盟を解消したことに。

桜が今までの煩悶を吐き出して士郎を拒絶しようとする「レイン」はHF中盤の山場になりますが、今までどれだけ悩んだか、桜がどれだけ自分自身をよく思っていないかをひたすら吐露する、というシーンなので「ヒロインの魅せ場」という役割をいまいち果たしてないあたり、ヒロインとしての桜の恵まれなさを感じます orz
むしろ衛宮邸に戻ってから、怯えながらも凛と対峙するシーンの方が魅力的にみえる気が。
とはいえ、一歩引いて何かを隠そうとするような桜の態度の頑なさが「レイン」通過で取れるのは確か。
―――16日間の聖杯戦争の9日目夜でやっとです。遅い、遅いよ。